女性職員の健康支援と働き続ける環境づくり

少子高齢化・人手不足が進む中で、女性職員を含む多様な人材を長く働き続けられるよう支えることは
極めて重要な経営課題です。

連合総研は9月、報告書「女性労働者の職場における健康課題―
女性が健康に働き続けるための環境整備に関する調査研究委報告―」を発表しました。
報告書の内容をもとに、押さえておきたいポイントと実践方針を整理していこうと思います。

第Ⅰ部:なぜ今、女性職員の健康支援なのか

1.従業員の生産性低下

少子高齢化、女性活躍推進、働き方改革といった社会の変化を背景に
就労女性の割合は45%を超えましたが、非正規雇用の割合は依然として高く
経済的自立の困難や健康格差の拡大が懸念されています。

例えば、女性職員が健康課題を抱えたまま働くと
プレゼンティーイズム(出勤してはいるが生産性が下がる状態)が発生しやすいと報告されています。

加えて、月経、更年期、メンタルヘルス、生活習慣病など
就労に影響を与える健康問題は多岐にわたり、包括的な支援が必要です。

2. 女性特有の健康課題と働く現場への影響

経済産業省の調査によると、女性従業員の約50%が
月経や更年期、不妊など女性特有の健康課題によって
職場で困難を感じた経験があると回答しています。

女性特有の健康課題と、職場の対応策は、以下の表のとおりです。

領域主な課題職場への影響・対応すべき点
月経関連・PMS疲労・腰痛・頭痛・集中力低下など勤務形態調整、休憩制度、相談窓口設置
更年期ホットフラッシュ・不眠・倦怠感・骨密度低下柔軟勤務、健康相談、定期健診の拡充
妊娠・出産つわり・流産リスク・産前産後体調変化母性健康管理指導、業務軽減措置、復職支援
不妊治療通院・検査負荷、ストレス時間対応、柔軟な勤務制度、相談体制
がん(乳がん・子宮頸がん等)治療と就労の両立支援通院休暇・勤務調整、理解促進
メンタルヘルスストレス・うつ・不眠産業保健体制強化、相談体制、ラインケア教育

第Ⅱ部:事業者が取るべき視点

事業者がとるべき対策は、以下の5つが考えられます。

1. 法制度・ガイドラインの理解と遵守

  • 女性活躍推進法の改正により、女性の健康上の特性を配慮する義務が明確化された。
  • 母性健康管理指導事項連絡カード(母健カード)の活用促進。だが、認知率は低く、今後の啓発が課題。
  • 育児・介護休業法、改正介護休業制度など、従業員のライフステージ変化を支える制度整備を怠らない。

2. 健康支援を組織戦略に組み込む

  • 女性健康支援を「福利厚生」扱いにとどめず、人材戦略・健康経営戦略の一要素と位置づける。
  • 効果の見える化(指標設定:休業率/離職率/満足度など)とモニタリング体制を構築する。
  • 部署横断での推進組織(人事・産業保健・現場責任者などを含む)を設け、方針・連携体制を整える。

3. 産業保健体制と相談支援の充実

  • 産業医・保健師の活用体制を見直す。女性特有課題対応に習熟した専門性を持たせる研修や体制強化。
  • 職場内相談窓口・社内相談制度(匿名相談、定期面談など)の設置。
  • 管理職・現場リーダーへの教育研修:
     - 「女性健康課題への配慮はハラスメントではない」という理解
     - 正しい知識に基づく対応姿勢
     - 困ったときは専門連携を活用する体制整備
    報告書でも、管理職側が対応に悩むケースが多く指摘されている。

4. 柔軟な勤務制度と就業環境の設計

  • 時差出勤、時短勤務、在宅勤務、勤務シフトの柔軟性を導入・拡充
  • 業務負荷の見直し(交代制、夜勤の配慮、過重労働防止)
  • 休憩・休息制度の見直し、勤務日の間隔確保
  • 職場環境(冷暖房、休憩室、トイレ設備、更衣室など)の改善

5. 教育・啓発と風土醸成

  • 女性健康課題(月経、更年期、妊娠・出産、がんなど)に関する理解促進セミナー、研修
  • 社内広報・啓発資料配布、ポスター掲示、オンライン情報提供
  • 健康課題を語りやすい職場文化づくり(オープンな相談風土、先輩社員やロールモデル活用)

医療・介護業界特有の配慮と留意点

医療・介護業界で、女性特有の健康課題を支援するためには、以下の配慮が必要です。

  1. 業務負荷と交代制:夜勤・オンコール・緊急対応が常態化しており
    体調変動に対する柔軟対応が不可欠。
  2. 患者対応・高責任業務との両立:体調不良時でも責任感から無理をしがち。
    支援制度を“使いやすさ”重視で設計する必要。
  3. 職場規模・基盤格差:小規模施設や個人経営院では、産業保健・相談体制の導入コストが重荷となる。
    外部専門機関との連携検討も必要
  4. ケアチームの多様性:看護師、介護士、リハビリ、営業、事務ほかジェンダー・年齢構成が多様。
    性別を踏まえた支援設計を業務別に検討する必要。
  5. 感染症リスク・労働衛生管理:マスク着用・防護具・交代勤務などの対応と、体調変化対応を両立できる体制設計。

経営者へのメッセージ

女性健康支援は「コスト」ではなく、「人的資本投資」です。
労働力維持と質向上を通じて、長期的な成果を生む可能性が高いからです。

まずは、小さな改善(相談窓口設置、研修実施、勤務制度見直しなど)を段階的に進め
結果を可視化して「成功体験」を積み重ねることが大事です。

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