「女性特有の健康課題」と職場の向き合い方

介護施設や医療機関では、職員の多くを女性が占めています。
その一方で
- 体調不良を我慢して働いている
- 不調の理由を上司に伝えづらい
- 突然の欠勤や離職につながってしまう
といった問題が、現場で起きていないでしょうか。
厚生労働省はこのたび
「女性特有の健康課題に関する問診」を健診で活用するためのマニュアルを公表しました。
これは、女性の健康問題を“個人の問題”で終わらせず
職場全体で支える視点を示したものです。
「女性特有の健康課題」とは何を指す?
マニュアルでは、以下のような健康課題が例示されています。
- 月経困難症・過多月経
- 月経前症候群(PMS・PMDD)
- 更年期障害 など
これらは、見た目では分かりにくく、個人差が大きいという特徴があります。
介護・医療現場のように、夜勤・立ち仕事・緊張感の高い業務が多い職場では
症状が悪化しやすいことも少なくありません。
経営者が注意すべきポイント
「義務ではない」からこそ対応に差が出る
「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」報告書において
一般健康診断問診票に「女性特有の健康課題」に係る質問を追加することが望ましいとされています。
今回のマニュアルに基づく問診は、法的な義務ではありません。
しかし、だからこそ次のような差が生まれます。
- 「体調不良=自己管理」として放置する職場
- 「働き続けられる環境づくり」として捉える職場
その目的は、女性自身の健康状態への気づきを促し
労働者が医療機関へアクセスできるよう支援することにあります。
また、女性の健康問診の回答診機関から事業者に直接提供されることはありません。
人手不足が深刻な介護・医療分野では
健康への配慮がそのまま「定着率」「採用力」に直結します。
対応すべき具体的な流れ(マニュアルのポイント)
STEP 1:基本方針の表明
- 女性特有の健康課題への職場としての姿勢を明確化
(社内ルールや方針として表明)
STEP 2:相談体制づくり
- 相談窓口の整備
- 管理職・全社員への研修・情報提供
STEP 3:専門医受診後の対応
- 労働者から医師の診断書などの申出があった場合の対応方法を整理
- 必要に応じた業務負担軽減・配慮対応を検討
STEP 4:職場環境改善
- 個々の相談対応だけでなく、職場全体としての配慮制度(休暇・勤務制度等)の整備
- 健診機関等から希望と同意がある回答の集計データを活用した改善等も可能(ただし個人情報配慮)
職場でできる支援の例
例として挙げられている支援や配慮事項は、以下の通りです。
✔ 生理休暇制度の整備
✔ フレックスタイムや勤務シフトの柔軟化
✔ 相談窓口・外部支援活用
✔ 管理職研修や社内教育プログラムの実施
社労士の視点で重要な「3つの実務ポイント」
① 健康情報の扱いは“慎重すぎるくらい”がちょうどいい
女性特有の健康課題は、極めてデリケートな個人情報です。
- 健診の問診結果は、原則として事業者に自動提供されない
- 本人の申出・同意があって初めて職場対応を検討する
② 配慮=特別扱いではない
「配慮すると不公平になるのでは?」という経営者の声もあります。
しかし実務上重要なのは
- 業務負担の一時的な調整
- シフトや勤務時間の柔軟化
- 医師の意見を踏まえた配置配慮
といった、合理的配慮として整理することです。
③ 制度がない職場ほど、現場判断がトラブルになる
制度やルールがない場合
- 管理者ごとに対応がバラバラ
- 「言った・言わない」の問題が発生
- 不満がハラスメント問題に発展
しやすくなります。
社労士としては
- 就業規則・社内ルールへの落とし込み
- 相談窓口の明確化
- 管理職向けの対応指針整理
を行い、現場任せにしない体制づくりを支援します。


