厚労省「高年齢者の労働災害防止指針」から考える、高齢者の労災防止策

60歳以上の労働者の割合は、19.1%に達しており
約5人に1人が60歳以上という状況です。
一方、休業4日以上の労災による死傷者は、高齢者が30.0%となっております。
高年齢労働者の労災が増加している状況から
令和2年3月に「エイジフレンドリーガイドライン」が策定されました。
さらに、厚生労働省は2026年2月、「高年齢者の労働災害防止のための指針」を公示しました。
本指針は、改正労働安全衛生法に基づき、高年齢者の特性に配慮した安全配慮措置を求めるものです。
適用日は2026年4月1日です。
努力義務とはいえ、実質的には「やっていないと説明がつかない」時代に入ります。
今回は、医療機関・介護施設の経営者の皆さまにとって重要な新指針について解説します。
なぜ今、高年齢者対策なのか?
医療・介護業界では
- 60歳以上の看護師
- 再雇用の介護職員
- 定年延長後のベテラン職員
が現場を支えているのが実情です。
一方で
- 転倒
- 腰痛
- 夜勤中の体調不良
- 反応速度の低下によるヒヤリハット
など、加齢特性に起因する労災リスクが確実に増えています。
高年齢者の活躍は「人材確保の切り札」である一方
対策を怠ると「労災増加」「人手不足の加速」「安全配慮義務違反リスク」に直結します。
会社が講ずべき措置
会社が高齢者の労働災害を防止するために取り組むべきことは、5つです。
- 安全衛生管理体制の確立等:経営トップによる方針表明及び体制整備
- 職場環境の改善:身体機能の低下を補う設備・装置の導入
- 高年齢者の健康や体力の状況の把握:雇入時及び定期の健康診断を確実に実施する
- 高年齢者の健康や体力の状況に応じた対応:産業医等の意見を聴いて実施すること
- 安全衛生教育:高年齢者を対象とした教育においては、写真や図、映像等の文字以外の情報も活用する
指針のポイント
医療・介護施設が、高齢労働者の労災を防止するためには
「職場環境の改善」と「高齢者の健康や体力の把握・対応」を実施することが重要です。
① 作業環境の改善
- 段差の解消、滑り止め対策
- 照度の確保(夜勤帯は特に重要)
- 重量物の持ち上げ補助機器の導入
- 入浴介助・移乗介助時の福祉用具活用
- 安全標識や危険箇所の掲示により注意喚起を行うこと。
→ 介護施設では「転倒災害防止」が最優先課題です。
② 作業管理の見直し
- 夜勤回数の調整
- 連続勤務の抑制
- 体力負担の大きい業務の偏り防止
- 個人差を踏まえた配置転換
- 無理のない作業姿勢等に配慮した作業マニュアルを策定し、又は改定すること。
「一律管理」から「年齢特性を踏まえた個別管理」へ移行しましょう。
③ 健康管理・体力把握
- 定期健康診断の活用
- 体力チェック:加齢による心身の衰えのチェック(フレイルチェック)等を導入すること。
- 本人との面談実施:労働者個人が特定されないよう医師等の意見を集約又は加工する必要がある
- 体調変化の早期把握体制
医療・介護では、本人の健康問題が患者・利用者の安全にも直結します。
④ 教育・意識づけ
- 高年齢者向け安全教育
- 若手職員への「配慮教育」
- 管理職へのリスクマネジメント研修
- コミュニケーション等の対人面のスキルの教育
経営者が今すぐ行うべき行動
中小企業では、指針の内容をすべて実施するのは厳しいので
「エイジエアクション100」を参考に、ポイントを絞った対策から始めることがおすすめです。
① 年齢構成の可視化
60歳以上職員の人数・職種・勤務形態を整理。
② 労災発生状況の分析
過去3年分の転倒・腰痛・ヒヤリハットを洗い出す。
③ 就業規則・安全衛生体制の見直し
「エイジアクション100」の対策から自社に適した対策を選んで
再雇用規程、安全衛生委員会の議題設定を再確認しましょう。
④エイジフレンドリー補助金の活用
エイジフレンドリー補助金には
手すり設置、段差解消、滑り止め加工、安全衛生教育の実施など
幅広い対策が対象に含まれます。
医療・介護施設が直面する経営リスク
高年齢者対策を怠ると、以下のようなリスクがあります。
- 労災増加 → 保険料上昇
- 休業者増加 → 人員不足
- 離職増加 → 採用コスト増
- 施設の評判低下
センター愛知ができる支援
当センターでは、医療・介護施設向けに
- 高年齢者リスク診断
- 夜勤体制の見直し支援
- 就業規則改定
- 管理職向け研修の実施支援
を実施しています。
まとめ
高年齢者は「守るべき存在」ではなく
戦略的に活躍していただく“経営資源”です。
医療・介護経営の持続可能性を高めるため
今こそ体制整備を進めましょう。


