医療現場の“ペイシェントハラスメント”──組織的対策が急務です

2025年4月より、東京都ではカスタマーハラスメント(カスハラ)防止条例が施行され
対策を講じた企業等に奨励金が支給される仕組みが導入されました。
今後、全国的にも「ハラスメント対策は企業の責任」という認識が広がり
対策方針の策定やマニュアル整備といった具体的な対応が一層求められていくことが予想されます。
■医療現場で深刻化する「ペイハラ」
こうした流れの中で、医療業界に特有のハラスメント問題が注目されています。
それが、患者やその家族による暴言・暴力・執拗な要求・セクハラなどの
“ペイシェントハラスメント(ペイハラ)”です。
- 「こんな医者に診られたくない」と怒鳴る
- 看護師の容姿や私生活に踏み込んだ発言
- 明らかに不要な長時間のクレーム
- 患者側の立場を利用した威圧的態度 など
これらはすべて、医療従事者の心身に大きなストレスを与え
離職やメンタル不調の一因となっています。
特に慢性的な人手不足に直面する現場では、
職員のモチベーションや定着率にも大きな影響を及ぼしかねません
■経営層・人事が取り組むべき3つの対策ポイント
ペイハラ対策は、個人の我慢や現場の努力だけでは限界があります。
組織としての明確な方針が必要です。
以下のような体制整備が求められます。
① カスハラ・ペイハラ対応方針の明文化
職員を守る立場から、患者・家族に対する対応方針を明示し、トラブル時に備えましょう。
② 教育とマニュアル整備
現場職員への対応マニュアル作成と研修の実施。
対応に迷わない「お守り」となるような基準づくりを。
③ 相談体制の確保
匿名で相談できる仕組みや、対応記録の保管体制などを整備しましょう。
■職員が安心して働ける職場へ
「患者第一」は当然ですが
医療を提供する側の安心・安全があってこそ
良質な医療が実現されます。
経営者や事務長、人事担当者の皆さまには
“ペイハラから職員を守ること”が人材定着・組織の安定につながる視点として
対策に取り組んでいただきたいと考えています。